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現在開業準備中!


by K2

こちらで修行されているんですか?


レジにいるとありがたいことに
日本人のお客様から声を掛けていただくことが多いのですが
「こちらで修行されているんですか」
と多くの方が尋ねられます。

「はい」と答えてはみるものの
次の瞬間、はて何の修行なのだろうと思ってしまう。

日本人が外国で、それも飲食業で働いていると
不思議なものでそれは自動的に修行ということになる。
ビジネスマンにはミュージシャンには修行という言葉は使わない。

日本にいるときは自分よりもずっと技術のある人と働いて
吸収することもたくさんあったけれど
今の職場で誰かがパン作りを教えてくれるということはない。
こういう製法で、こういった材料でと試行錯誤を繰り返しながら作っている。
それを修行と言えなくもないけれど
今学んでいるのはきっと製造よりも経営なのだろう。

「フランスで学んだ美味しいパンです」
そう言って日本で独立開業したとしたら
一体何ヶ月店を潰さずにいられるだろう。
早くて1年、長くて3年だろうか。
開業して3年以上もつ飲食店は全体の3割ほどだそうだ。

美味しいパンを作る自信がほんの少しはあっても
店を上手く経営していく自信は今は全くない。
以前テレビでマネーの虎という番組をやっていた。
投資家に対してプレゼンし、開業資金を援助してもらうという内容だったが
「なぜ店をやりたいのか」
「もし潰れたらどうするのか」
「利益を上げるにはどうしたらいいと考えているのか」
「お客はなぜあなたの店を選ぶのか」
など
突っ込んだやりとりに「大人版のしゃべり場だ」と思って眺めていたが
実際にあの場でプレゼンしたとして
1円でも投資家にお金を出したいと思わせることができるだろうか・・・
そう考えると到底無理という結論に行きついてしまう。

少なくとも
「お客と同じくらい従業員も満足する店」
「質を落としてまで利益を上げようとはしない店」
この二つは自分で店をやる上での絶対条件。

飲食業界にありがちな長時間低賃金労働。
それを当たり前だと片づける。
「お客様第一、価格を下げて提供し、その分人件費を安くする」

人件費を安くすることは間違いではない。
しかしここで人を多く雇って少なく分配するのか
少ない人員で多く分配するのかを選択するときに
経営者が仕事の内容に通じていると
「少ない人員で・・・」を選ぶことができる。

仕事の無駄を省き、効率良く良質な商品を作る。
製造と経営で部署が分かれている場合、
両方に通じている人が力を持っていないと上手くいかない。

無駄な仕事が多くなり、従業員が多くなり、
長時間勤務で商品の質は下がり、お客は離れ始め、
価格を落として客離れを食い止めようとするあまり
従業員の給料は上がらず、残業代もつかない、
やる気は削がれ店を辞めるスタッフが増え、
新たに雇うが、仕事を覚える前に辞める。

誰も得をしないスパイラルを滑り落ちていく。

いや待てよ、
品物を売る。
「お友達を紹介していただければ次回から割引しますよ」と付け加える。
さらに「紹介して下さった方にお小遣いが入りますよ」と耳打ちしておいて
これがどんどん続いていくと
誰もが得をする上に
莫大な会員数と会費が・・・
あ、これはダメか・・・
マウス講は違法でしたか。

法を犯さないことは大前提として。

製造者と経営者に必要なスキルは異なる。
製造に必要なのは高い技術と向上心、そしてチームワーク。
経営に必要なのは冷静さと決断力、そして人を大切にする心。
何年も何十年も製造の修行をした人でも
独立開業してすぐに店を潰してしまう人は多い。

物の作り方だけ知っていても会社は続かない。
売り方やサービスの仕方だけ知っていてもお客は満足しない。
修行に10年かけるとするなら
半分ずつ同じだけの情熱を傾けて学ばなければ
10年20年続く会社は作れないと考えて・・・と書いていたら
今回も写真なしで申し訳ないです。
by k_cafe0710 | 2012-03-23 09:23 | mon avis